COLUMN

【令和8年分】年末調整で「扶養」の線が動きます
——税と社会保険で、基準が違う話

2026年10月22日|マミ社会保険労務士事務所(北九州)

毎年12月の年末調整。今年は、例年よりも少し気をつけたい年です。

変更点が多く、しかもいちばん変わったのが「扶養」のところ。
社員の方ご本人が気づいていないまま年を越してしまう、ということが起こりやすい内容です。

先に、ざっくり全体をお見せします。

変わったところ令和8年分改正前
扶養親族・同一生計配偶者の所得要件62万円以下(給与収入なら136万円以下)58万円以下(123万円以下)
給与所得控除の最低保障額74万円65万円
基礎控除(所得税法86条の本体額)62万円58万円
勤労学生の所得要件89万円以下(163万円以下)85万円以下(150万円以下)
※ 基礎控除は、これに租税特別措置法の加算がのります。令和8・9年分は、合計所得金額489万円以下(収入が給与だけなら665万5,556円以下)の方で104万円です。
表の62万円は条文上の本体額で、実際の年末調整はこの加算後の金額で計算します。
「基礎控除は62万円になった」と社員の方に伝えると、違う説明になってしまいますのでご注意ください。

このうち、会社の実務にいちばん響くのが一番上の行です。

「去年は扶養に入れられなかった家族」が、今年は入れられることがあります

扶養親族や同一生計配偶者にあたるかどうかの線が、合計所得金額58万円以下から62万円以下に上がりました。
収入が給与だけの方なら、年収123万円以下 → 136万円以下ということになります。

ほかの区分も、あわせて動いています。

区分令和8年分改正前
扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子62万円以下
(給与なら136万円以下)
58万円以下
(123万円以下)
特定親族62万円超123万円以下
(136万円超197万円以下)
58万円超123万円以下
(123万円超188万円以下)
配偶者特別控除の対象となる配偶者62万円超133万円以下
(136万円超207万円以下)
58万円超133万円以下
(123万円超201万5,999円以下)
勤労学生89万円以下(163万円以下)85万円以下(150万円以下)

つまり、パートで働く配偶者の方や、アルバイトをしている大学生のお子さんが、今年から新たに扶養の対象になるご家庭が出てきます。

ここでひとつ、大事なことがあります。

新たに扶養親族等の要件を満たすことになったご家族について控除を受けるには、
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要です。
黙って待っていても、自動では反映されません。

【出典】国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)

申告書を配るときに、ひとこと添えていただくだけで防げることです。
「ご家族の収入が136万円以下なら、今年から扶養に入れられるかもしれません。心当たりがあれば声をかけてください」——それくらいで十分だと思います。

ここが混ざります。「税の扶養」と「社会保険の扶養」は別物です

これが今日、いちばんお伝えしたいところです。

上で見た136万円は、税金の話です。
一方で、健康保険の扶養(被扶養者)に入れるかどうかは、まったく別の基準で決まります。

健康保険法では、被扶養者は「主としてその被保険者により生計を維持するもの」と書かれているだけで、金額は出てきません(健康保険法第3条第7項)。
実際の金額は、昭和52年の通達で決まっています。

「認定対象者の年間収入が一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては一八〇万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の二分の一未満である場合は、原則として被扶養者に該当するものとすること。」

【出典】「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号)

つまり、社会保険の扶養は130万円未満のまま。税の136万円とはズレています。

さらに、19歳以上23歳未満のご家族については、令和7年10月1日から扱いが変わっています。

「認定対象者の年間収入に係る認定要件のうち、その額を130万円未満とするものについて、当該認定対象者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合にあっては150万円未満として取り扱うこと。」

【出典】「19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定について」(令和7年7月4日 保発0704第1号・年管発0704第1号)

整理すると、こうなります。

税(令和8年分)社会保険(健康保険)
配偶者・一般のご家族給与収入136万円以下
(配偶者は、これを超えても配偶者特別控除が給与207万円以下まであります)
年間収入130万円未満
(60歳以上・障害のある方は180万円未満)
かつ 被保険者の年間収入の2分の1未満
19歳以上23歳未満のお子さん給与収入136万円以下なら扶養親族(「特定扶養親族」といいます)。136万円超197万円以下は特定親族特別控除の対象年間収入150万円未満
判断のしかた1月〜12月の1年間で確定した金額これから1年間の見込みで判断

数字も、数え方も違う。
税は暦年で締めて確定した金額、社会保険はこれから先の見込み。だから「去年は130万円以下だったから大丈夫」とは言えません。

「被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。)」

【出典】「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(令和3年4月30日 保保発0430第2号・保国発0430第1号)

社員の方から「扶養の範囲が136万円に広がったんですよね」と言われたとき、税の話なのか、健康保険証の話なのかを分けて聞いてあげられるかどうか。ここが、会社の信頼の分かれ目になります。

中小企業の現場では、こうなりがちです

私は社労士になる前、7社で総務・人事をしてきました。
年末調整の時期に何度も見てきたのは、こんな場面です。

ひとつは、年が明けてから「知らなかった」が出てくること。
3月ごろに「実は妻の収入が、扶養に入れる範囲だったみたいで」と相談が来る。そこから確定申告のご案内をすることになります。社員の方は損をしていないのですが、「会社が教えてくれなかった」という気持ちが残ってしまうことがあります。

もうひとつは、この作業を誰か一人が抱えこんでしまうこと。社長ご自身のこともあれば、事務の担当の方のこともあります。
申告書を配って、集めて、不備を聞いて、また集めて。この「集める」ところがいちばん時間を食います。しかも12月は、現場もいちばん忙しい時期です。

どちらも、11月のうちに一度アナウンスを出しておくだけで、かなり軽くなります。

体の面から見ると——12月は、座り続ける月です

私はヨガのインストラクターでもあるので、どうしてもこちらの話もしたくなります。

年末調整の時期は、パソコンと紙に向かう時間が一気に増えます。
肩が上がり、首が前に出て、呼吸が浅くなる。夕方になると、目の奥が重い。レッスンに来てくださる事務職の方からも、この季節は肩まわりのご相談が増えるように感じます。

私がお伝えしているのは、ごくかんたんなことです。

ひとつ、1時間に一度は立ち上がって、両腕を上に伸ばして、ゆっくり息を吐く。
ひとつ、画面から目を離して、窓の外のいちばん遠いところを5秒だけ見る。
ひとつ、肩を思いきり上げて、ふっと落とす。これを3回。

それだけで何かが治るという話ではありません。
ただ、同じ姿勢を続けないこと。それが、12月を乗り切るいちばん現実的な方法なのだと思います。
社長が「ちょっと休憩しよう」と声をかけられる会社は、それだけで働きやすい会社です。

この「136万円」は、ずっと続く数字ではありません

ひとつだけ、先のことも書いておきます。

いま見ている136万円は、令和8年・9年分の数字です。
給与所得控除の74万円が租税特別措置法の特例で、令和10年分以後は元の計算式(収入金額×30%+8万円。69万円未満なら69万円)に戻ります。136万円は「62万円+74万円」で出てくる数字なので、74万円が動けば136万円も動きます。

さらに、令和10年分以後は、基礎控除と給与所得控除の最低保障額を2年ごとに物価の動きに合わせて見直すことになりました。

来年も同じ数字とは限らない——ということだけ、頭の隅に置いておいてください。

11月までにやっておきたい、3つのこと

① 申告書を配るときに、ひとこと添える

「ご家族の収入が136万円以下なら、今年から扶養に入れられるかもしれません」。この一文を、配付のメールや紙に入れておきます。
なお、19歳以上23歳未満のお子さんで給与136万円超197万円以下の方は、扶養控除等(異動)申告書ではなく特定親族特別控除の申告書が必要になります。どの用紙が必要かは、顧問の税理士の先生にご確認ください。

② 「税の扶養」と「健康保険の扶養」を分けて説明できるようにしておく

聞かれてから調べるのではなく、先に一枚の紙にまとめておくと、その場で答えられます。社員の方の安心につながります。

③ 11月までの源泉徴収は、今までどおりで大丈夫

令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更はありません。精算は12月の年末調整で行います。慌てて途中から変える必要はありません。

「カネは税理士、ヒトはマミ」です

最後に、はっきりお伝えしておきたいことがあります。

年末調整そのものの税額計算や、税務のご相談は、顧問の税理士の先生へ。そこは税理士の先生の領分です。

当事務所がお引き受けしているのは、その手前と後ろにある「ヒト」の部分です。
申告書を配って集める段取り、社員の方への説明、扶養の変更にともなう健康保険の手続き、給与計算への反映、入退社のたびの社会保険——このあたりが、毎年いちばん手間のかかるところだと思います。
(年末調整の計算そのものと、申告書の記載内容のご判断は、顧問の税理士の先生の領分です。当事務所はお引き受けしていません。)

会社の「カネ」は税理士の先生に。「ヒト」は、わたしに。
そう分けていただけると、社長の12月は少し静かになるはずです。

※ 本記事は2026年10月22日時点の情報に基づいています。金額・要件は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)、健康保険法第3条第7項、昭和52年4月6日保発第9号・庁保発第9号、令和7年7月4日保発0704第1号で確認しています。
※ 所得税法第86条の条文は、e-Gov法令検索では改正前の「58万円」表示のままです(2026年10月22日時点)。改正後の金額は、上に挙げた国税庁の資料でご確認ください。
※ 引用中の太字による強調は筆者によるものです。
※ 税額の計算・税務相談は税理士の業務です。個別の税務のご判断は、顧問の税理士の先生にご確認ください。
※ 扶養の認定は、最終的には保険者(協会けんぽ・健康保険組合)の判断となります。個別のご事情については、無料相談でお聞かせください。

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